名前:ほんわか名無し 投稿日:2011-01-08
50 :ほんわか名無しさん :2007/03/04(日) 20:49:30 0
すこし長くなりますが、父の話をします。
うちは5人家族に犬が2匹、父は小さな会社の平社員で、決して裕福な家庭ではありませんでした。
無口でシャイな父は、普段から家族ともあまり話さず、友人も少ないようでした。
私はそんな父が大好きでしたし、時々休みの日に何も言わず遊びに連れ出してくれるのが、とても嬉しかったです。
母、姉、妹は明るくてお喋りでしたが、私だけは父に似たのか小さい頃から物静かで、
父とは言葉を交わさなくても、一緒にいるととても幸せでした。
今まで母には数え切れないくらい叱られ、叩かれたことも星の数ほどあります。
でも父に叱られた記憶はありません。もちろん叩かれたことも。
母に叱られて泣いている私を、やんわりと庇ってくれる優しい父でした。
そんな父が、突然入院しました。私が高校2年生の夏でした。
身体が大きくて丈夫だった父ですから、私も最初は軽い気持ちで、すぐ退院できるものだと考えていました。
でも、日を追うごとに父は痩せ細り、お見舞いに行く度に酸素マスクやら呼吸器やらが増えていきました。
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それでも父は私がお見舞いに行くと嬉しそうで、特に言葉も交わさず、病室に備え付けられたテレビを長いこと一緒に観たりしていました。
しかし、入院してから1ヶ月近く経ち、父は自分で呼吸ができなくなりました。
体内に機械を入れて呼吸しなければならない、
でもそうすると物も食べれないし言葉も話せなくなると、先生に言われました。
父は「治ればまたもとに戻るんだから」と言って、機械を入れる直前も、
特にたくさん物を食べたり話したりすることもありませんでした。
それから1週間も経たずに、父は眠るように亡くなりました。入院から1ヶ月とすこしでした。
私はすぐに現実を受け入れることができなくて、涙が出てきませんでした。
まだあのベッドに父が横になっているような気がして。
また父が家に帰ってきて、靴箱の上に自転車の鍵を置く音がするような気がして。
51 :ほんわか名無しさん :2007/03/04(日) 20:50:52 0
お通夜の日に、父の友人の奥さんが私に話をしてくださいました。
無口な父が、友人に私の話をしていたそうです。
「あの子は教えてもないのに、昔から絵がすごく上手なんだ」と、私の自慢をしていたそうです。
それを聞いて、私は涙が止まりませんでした。
私は小さい頃から絵が好きで、よく絵を描いていたのですが、
父が面と向かってそれを褒めてくれたことなんてなかったからです。
ああ、お父さんは何も言わないけど私のことをちゃんと見ててくれたんだ。
そう思うと嬉しくて、それにありがとうと言えないのが悲しくて、涙が溢れて止まりませんでした。
それから数日後、父の遺品を整理しているとき、私が幼稚園くらいの頃に描いた下手くそな絵が
大事にしまわれているのを見つけて、また泣きました。
あれから2年半が経ちました。
私は今、芸術系の大学で、絵の勉強をしています。
奨学金を受けながら、ギリギリの生活だけど、毎日頑張っています。
あのとき、父の話を聞いて、真っ直ぐ夢に向かって進む決心がつきました。
お父さん、私、お父さんのおかげで、今、とっても毎日が充実しているよ。
何も言わなくていいから、天国から見守っていてね。ずっと大好きだよ。