名前:ミナミ 投稿日:2017-05-22
わたしが中学生のときの話です。
当時、わたしには恋人のような人がいた。
「ような」っていうのは、付き合う約束をしてたけど、まだ付き合いだしてない、まあ婚約みたいな状況。
ガキながらにも色々と身の回りに問題を抱えてたわたしたちは、全て落ち着いたら付き合おうね、って言って、毎日メールして、たまーにお互いの家(違う中学校だったし、街の端と端だから15キロくらい離れてたけど)を親にバレないように行き来して、ガキのくせに背伸びした行為したりして、一緒のベッドで笑い合ったりしてた。
いつものようにわたしの家に彼が来て、親がもうそろそろ帰ってくるから、っていうことで、夕方には彼を帰した。
その時、部屋で身支度を整える彼を見守ってたんだけど、なんか無性に帰らせたくないっていうか、離れたくないなーって思った。
駄々こねてるとかじゃなくて。
今までこんな感覚はなかった。
そして無性に抱きつきたいって思った。
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けど、「んじゃー俺行くね。また来週な!」って言って、ああなんだいつも通りじゃん、って思って。
外まで見送って、彼が自転車に跨って、くしゃっと笑って頭を撫でてくれた。
「そんな寂しい顔すんなって、また会えるだろ!」
最後にキスしてくれて。
じゃあな!って手を振って、わたしは彼が見えなくなるまで見送った。
それから1週間くらいたったかな。
塾で夜、授業受けてたら、ふと彼の香水の匂いがした。
妙な胸騒ぎがした。
帰宅後、当時は塾で5時間以上勉強してたから、疲れてすぐ寝た。
翌朝、お母さんとご飯食べながらニュース見てたら、突然彼の名前が読み上げられた。
画面に目をやったら、ぐしゃぐしゃに変形した彼の自転車と、彼の携帯電話と、割れたガラスと、血だらけの車が映ってた。
飲酒運転の車にはねられたとのことだった。
わけがわからなくて、失神した。
葬式も、心ここに在らずって感じで、ただずっと泣いた。
遺影を見ても実感なんてゼロだった。
後に警察関係の知り合いから聞いたんだけど、赤信号の手前にはブレーキ痕もなくて、横断歩道を青で渡ってた彼は猛スピードで突っ込んできた車に30メートル近く飛ばされて、上半身と下半身が腰から離れてたらしい。
それでも即死じゃなくて、2時間近く頑張ったって。
わたしが彼の匂いを感じたのは、ちょうどその事故が起きた時間だった。
きっと、最期に会いに来てくれたんだろうなって思う。
時間がたって心が少し落ち着いてからそう考えると、また涙が止まらなかった。
戻ってきてくれる気がして、彼の携帯にメールしたりした。
返事なんてくるわけなかった。
けど、彼のお母さんがある日返事をくれた。
わたしのことを心配してくれて、会って話を聞いてくれた。
そのときに、彼のお母さんの口から詳しく事故のことを聞いて、もう何も言えなかった。
2人で泣きながら、「彼の分まで生きます」って約束した。
飲酒運転の無責任な運転手のせいで、15歳の命が奪われたと考えると、数年経った今でも怒りが湧いて止まらないです。
彼のことは忘れられないし、今でも愛してる。
なんであのとき抱き締めなかったのかなーとか、もっと電話で好きって言えばよかったとか、色々いまでも考えてしまう。
けど、彼に自慢できるように、いつかはちゃんと幸せになりたいな。
この事故を受けて、バカな周りの奴から「お前が連絡したからそれ見ててはねられたんだ」とか「お前と出会わなきゃあいつは死ななかった」とか、下らないこと言われたりイジメられたりしたけど、彼のお母さんや、他校の彼の仲間たちの手助けもあってどうにか乗り越えて、ちゃんと社会に出てます。
何を言われても、彼はわたしの大切な人です。
彼と出会えたことは、わたしの今後の人生への宝物です。
出会ってくれて、見つけてくれて、ありがとう。
どうか、安らかに眠って下さい。
いつかわたしがそっちに行った時は。
貴方は中学生の見た目のままかもしれないけど、老けたわたしをどうかもう一度、あの頃みたいに抱き締めてね。
わたし、貴方のためにもう少し頑張って生きてみるから。
あの日抱き締められなかった背中に、もう一度触れさせてください。