名前:大人になった名無しさん 投稿日:2016-12-23
422 :大人になった名無しさん:2005/04/21(木) 04:00:17
俺が打ってる店(金魚すくい)に兄妹だと思われる
7歳ぐらいの女の子と10歳ぐらいの男の子がやってきた。
妹は他の子供たちが金魚すくいをしているのを、興味津々で長い間見ていたが、やがてせがむように兄の方を見た。
正直、二人の身なりは裕福そうには見えず、男の子は「1回300円」と書かれた看板を、何とも言えない表情でしばらく見つめていた。
そしてもう一度妹の方を見てから、俺に向かって
「1回」と言いながら、握り閉めた手を差し出した。
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彼の手から渡された3枚の100円硬貨は、余程大事に握っていたのか、とても熱かった。 妹は満面の笑みを浮かべて、俺から紙を受け取ると、夢中で金魚すくいを始めた。
男の子は妹が楽しそうに遊んでいるのを見ながら、満足そうだったが、やはり自分も遊びたいのだろう、身を乗り出してソワソワとしている。
こんな時、俺はわざと手を滑らせて、紙を船の中に落とす。
「あー、しまった、濡れてもうた、しゃーない、勿体無いからボク使え」
そう言って、濡れた紙を男の子に渡した。
男の子はすごく嬉しそうな顔をして、
「ありがとう」と言うと、眼を輝かせて、金魚すくいをしようとしたが、ちょうどその時、
妹が兄のそばに寄ろうとして躓いた。
そしてその拍子に兄とぶつかり、妹の紙が
破れてしまった。
妹の泣きそうな顔を見て、男の子は俺に、
「あげてもいい」
と手にした紙を見せた。
俺が頷くと男はニッコリ笑って手にした紙を妹に差し出した。
そして、妹と俺に気を使わせない為だろうか、
「俺、ちょっと向こう見てくるから、ここで遊んどけよ」
と言って走り去っていった。
妹はしばらく困ったように立ち竦んでいたが、やがて再び金魚すくいを始めた。
しばらくして、妹が遊び終わった時、隠れてみていたのか、タイミング良く兄が現れた。
そして俺に向かって、再び「ありがとう」と笑顔で言い、妹にも同じように言わせると、妹の手を引いて、行ってしまった。
もう10年前の話だが、俺は今も彼の笑顔を忘れてはいない。