名前:無名さん 投稿日:2012-07-28
1 :ユウキ:04/06/04 23:33 ID:5A1ZBD7t
少しだけ俺の話を聞いてくれ
ウチにはもう10年飼っていた猫がいたんだ。
ウチの前は昔大きな広場で、その猫はその広場の片隅にある車の中で寝ていた子猫だった。
俺と姉ちゃんでその猫を家の庭まで連れ帰ってきちゃって餌とかやってたんだよね。
でも父親は物凄い猫(というか動物全般)が嫌いだったから、庭で餌をやってる俺らをいつも怒鳴りつけてた。
ある日母親が家の中で飼うことを許してくれた。なんで許してくれたんだろうなんてことは喜びに酔いしれてた俺らは気にもしなかったけど、母親も動物好きだったから隠れて餌をやってた、ということを後で聞いた。
俺と姉ちゃんで猫にミルと名前をつけた。
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シャム猫と何かの雑種なんだとおもう。白にうすーい灰色の柄が入っていた。
猫に名前なんて父親には関係ないことで彼はやっぱり名前なんて呼ばなかった、というか家の中に存在するのが嫌だったんだから当然だったな。
近づいてきたら追い払う動作をしたり、自分から避けてた。
ある休日の朝、父の寝室から、彼の寝起きの低い声が聞こえてきた。
「こいつ、いつのまに寝てたんだ~・・・・・」
俺と姉ちゃんは父の声を聞いて部屋にいった。
すると、ミルは父のお腹の上で寝てたんだ。俺と姉ちゃんは大爆笑。
「お父さん動けないじゃん!ミルの復讐だろ(笑」
父は予想に反して追い払わずこういった
「いったいいつまでねるんか・・・あついったいね・・」
父の顔は相変わらず仏頂面で全然笑ってはいなかったけど、今にも笑みがこぼれそうなのを我慢してそうな顔だった。
2 :ユウキ:04/06/04 23:35 ID:5A1ZBD7t
その日から父のミルに対する態度は少しよくなった。
それに不思議なことに、ミルはいつも餌をあげたり遊んだりしてあげる俺や姉ちゃんよりも、無愛想で撫でたりもしない父親を慕ってたんだ。
昼寝は父の部屋の机のしたの座布団で、夜寝るときはだけは絶対に父親のベッドに寝むりにいってたんだ。
父の部屋は屋根裏部屋だから、急な階段を上がっていかないといけないのにわざわざのぼってたんだ。
母親も姉ちゃんも「なんであんな臭いとこでわざわざ寝るとかねー」っていってた。
しかし父親はもうミルを追い払うことも無くなった、敢えて避けることもなくなった、しかしミルという名前だけは絶対に呼ぶことはなかった。
それから、何事もなく年月は過ぎたんだけど、ある時ミルは病気にかかった。普通の猫の風邪だった。
獣医さんにも診てもらって、すぐ治る病気だといわれたんだ。でもミルの風邪は五日間たっても治らない。
でも獣医さんは、風邪でしかないうに元気になった。
やっぱ風邪だったねーと俺らは安心した。
ミルはそれ以来風邪も引かなかったし、他の病気も全然かからず元気に過ごしてたんだ。
その頃には俺は高校三年、姉ちゃんはもう働き始めていた。
しかし、そんだけ経っても相変わらず父はミルのことを名前で呼んだのをきいたことがなかった。
オイとかオマエとかそんな風によんでたっけな。それに敢えて自分から撫でたりすることも、遊んだりすることも一回もなかった。
3 :ユウキ:04/06/04 23:36 ID:5A1ZBD7t
ある日、またミルが病気にかかった。
獣医さんに見せるとそれはまた単に風邪だといわれた。それを聞いて家族はみんな安心した。
しかし、やはりなかなか治らない。
前病気にかかった時は、五日間で治ったのに今回はもう3週間が過ぎた。
普通は2~3日で治る病気なだけにさすがに俺らだっておかしいと思った。
獣医さんは、俺らにミルは詳しく検査したほうがいいかもしれないといった。
その頃からミルはいつも鼻水がいっぱいでるようになった。
父の部屋にいく階段を登るのも少し辛そうになってた。
ミルの検査をしてもらうことになって獣医さんのとこに連れて行った。
俺らは、ミルは風邪じゃない病気にかかっただけ、その病気みつければすぐ治るだろうねーみたいな楽観的な感覚だったんだ。
3日後に獣医さんのいった。俺は学校だったから行けなかった。
母親と姉ちゃんは、ミルの病気を楽観的に考えていた自分らとはまったく逆の絶望的なことを聞いた。
「ミルは生まれつき白血球が少なく、そして白血球の減っていく病気です・・・わかり易くいうと・・・猫の白血病みたいなものです・・・いまは、白血球が物凄く少ない状態です」
俺が帰ってきたのは学校が終わった6時くらいだったかな。