名前:名無し 投稿日:2009-10-03
カノジョが10年前に死んだ。
当時俺たちは高校3年生で、同じ高校に通い、同じ部活だった。
野球部だった。
俺とカノジョは近所に住む幼なじみで、
俺は小さい頃から
野球が好きなの両親から
野球を吹き込まれた。
だから、いつも一緒にいたカノジョも野球をするようになった。
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小学校に入り、地元のチームに入って本格的に練習すると、カノジョは俺よりも上手くなっていった。チームには他に女の子がいなかったけど、カノジョは気にせずに、俺たちも気にせずに、仲間として野球をした。
カノジョはピッチャーだった。
中学校でも野球を続けて、もちろん試合にも出た。
野球をしているにも関わらず、背中まで髪を伸ばして、それを毎日きっちり結んで、日焼けしすぎないように毎日日焼け止めを塗りこんでいた。
だから俺はいつも
「そこまでして野球がしたいのか?」
って聞いていた。
そのたびにカノジョは
「ここまでしてするほど野球が好きなんだ。私に野球を教えてくれたのは〇〇(俺)の親だから感謝してるよ。」
そしていつも最後に、泣きそうになりながらこう言った。
「女の子が試合に出させてもらえるのは中学校までだから、今のうちに野球を楽しんでおかないと。」
女の子が公式試合に出させてもらえるのは中学まで。俺たちは高校に入ると、甲子園甲子園、ってなるけど、カノジョにとって高校に入ることは野球から離れなければならない、
とゆうことだった。
そして俺はカノジョと付き合うことになった。
カノジョは、高校に入ったら野球はやめる、と言っていた。
俺たちは同じくらい頭が悪くて同じ高校を受けることになった。
頭はよくないけれど、野球が弱くない高校を選んだ。
受験が近づくと
カノジョはやっぱり野球を続けてみる
と言い出した。
試合に出させてもらえなくても、野球は大好きだから練習だけでもやらせてもらうんだ、って。
そして俺たちは無事合格。
春休みは他の中学で同じ高校に受かった野球友達と、その高校に練習に通った。
カノジョは入部させてもらえるように、必死で監督に頼んでいた。
カノジョは野球が上手で地元では有名だったけど、実際入部となるとやっぱりためらうものだ。
カノジョは春休み俺たちと毎日高校に通い、監督に頼んでいた。
それで監督もカノジョを入部させてくれた。
入学してからは
きつく、つらい練習が続いた。
それでもカノジョは必死になって頑張った。
甲子園を目指し、
ひたすら甲子園を目指し。
だけど…
3年の夏、
カノジョは死んだ。
練習にくる時に事故にあって、目を覚まさないまま、死んじゃった。
グラウンドで練習していた俺たちは、それを聞いて信じられなかった。
選手もマネージャーも監督も、ただただ驚くばかりだった。
カノジョは皆から好かれていたから。
俺は生まれてはじめて声をあげて泣いた。
カノジョのお葬式が済んだ後、俺はカノジョのお母さんに呼ばれた。