名前:無名さん 投稿日:2011-04-30
中学生の頃からずっと同じ学校だったんだ。
でも、お互いあんまり楽しく喋るようなタイプじゃなくてさ。
俺はもともと人と話すのが苦手な暗い男で、嫁はずっと教室の隅で本読んでるようなほんとに大人しい子だった。
嫁のことは辛うじて記憶に残ってるくらいだったし、嫁も多分最初は俺のことそんなに気にかけてなかったんだと思う。
偶然同じ高校に進学して2年で同じクラスになった。
席も案外近くて、ちょっとずつ話せるようにもなって。
このときは昼休みとかに1~2回言葉を交わせればいい方だった。
そのぐらい俺も嫁も口数が少なかった。
月並みだが、時間が経つにつれて一緒にいる時間が増えてった。
知らないうちに大学も一緒に行ってて、気が付いたら一緒に住んでて、いつの間にか結婚してた。
文章にするとほんとに素っ気無いけど、それが自然だった。
SPONSORED LINK
ここまで来るのにお互いに抵抗もなかったし、なによりも言葉はなくともお互いが大切で、大好きだった。
自分で言うのもなんだけど不器用なんだよ、ほんと。
簡単にコミュニケーション取れる人たちの神経を疑うくらいに。
そんな俺だから結婚して数年、まともな「愛してる」をまだ言ってなかった。
さすがに「おはよう」とか「おやすみ」とか「いただきます」とかはもう言えるんだ。
でも、どうしても「愛してる」だけが言えなくて。
そんなときにこのスレを見た。
いや、正確にはこのスレに背中を押してもらおうと思った。
今日こそは言う!って意気込んで、保存してあるコピペを会社で延々読み直した。
いろんなパターンでイメトレしながら、家に帰った。
いつもみたいに表情だけで「おかえり」って言う嫁。
これでも学生時代よりは表情豊かになってるんだよ。
で、いつも通り晩酌だ。
予定ではここで言うつもりだった。
でも、言えなかった。
言えるわけない。ただでさえ心臓バックンバックン言ってるのに。
黙々と飯食いながら、無理だと諦めた。
やっぱり俺みたいなのには分不相応なんだよ。
そろそろ風呂入ろうかと思ってたら、偶然嫁のケータイが鳴った。
ちょっと笑っちゃうんだが、嫁のその着メロが前に二人でカラオケで歌ったことのある曲だった。
勇気を振り絞って二人でカラオケ行ったんだけど、恥ずかしさが勝って結局何も歌えなくて、でもこのままじゃいけないと思って酒飲んでヤケになって、二人で顔真っ赤にして歌った。
嫁はその曲を何年もずっと着メロにしてる。
「変えないの?」って聞いたら「絶対変えない」って健気に言い張ってた。
嫁が(多分)自分のおふくろさんと電話してる間、俺は決意を固め直した。
嫁が電話切った。
「あのさ…」
「…えっ?」
焦る嫁。
当然、いつもはこんな半端なところじゃ喋らない。
俺は言ってやった。
でも、噛んだ。
「あいしt」で終わった。
惜しい。
嫁(゜ω゜)??
……だよなw
もっかい挑戦。
「あいs…」
今度は早い段階で噛んだ。
泣きたくなったけど空気的にキツくなってきたから、ヤケクソで「あいし」まで、声震えてたけどでっかい声で言ってやった。
そこまでなら言えた。
嫁、賢いんだ。
だから、なんで俺がこんなに改まってるのか分かったんじゃないかな。
何を言おうとしてるのかも多分。
嫁が痛いくらいに手握ってきた。
でも俺の気持ち汲んで、俺が言い終わるまでは何も言わないつもりらしい。
顔真っ赤にしてやんの。
そんでもって睨んでるのかなんなのか、俺のこと真っ直ぐ見てんの。
お互い恥ずかしがりなの知ってるくせに、俺のこと真っ直ぐ見てんの。
そんなの見てらんなくて、半分気が抜けた感じで、でも言えた。はっきり言えた。
一回目は最初に話しかけたとき。
二回目は初めて「好き」って言えたとき。
そしてこれが三回目の俺の精一杯の勇気だった。
言い終えた瞬間、嫁の方から思いっきり抱きついてきた。特に泣くとか笑うとかじゃないんだけど、ずっと抱きしめ合ってた。
しばらくして、嫁がものすっごいちっちゃい声で「私も愛してる」って言った。