ある女子生徒が、鞄の中に入れていた、現金の入った封筒を盗まれたと騒ぎ出したんだ。
すると、クロベーを虐めてた連中の一人が
「貧乏人の黒田に違いない」
と騒ぎ立てやがったわけ。
移動教室の時、おっとりしたクロベーはいつも最後まで教室に残ることが多く、それが疑われる要因になったってこと。
俺とHは必死に「クロベーは人の物を盗んだりするようなヤツじゃない」と訴えたが、
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生活指導の強面教師は、クロベー犯人説を真に受けてクロベーを尋問しやがった。
身に憶えのない容疑に、クロベーは「知らない」と否定したが、
状況証拠のみでクロベーの尋問は続き、
語彙の乏しいクロベーは、
ただ「知らない」と言い張るばかりで、生活指導の教師の心証を悪くしたようである。
そして下校時間を過ぎ、その日の取調べは一端終了し、クロベーは仮釈放となったんだ。
ところが次の日、あらぬ冤罪を掛けられた息子を弁護すべく、クロベーの母ちゃんが職員室に乗り込んで来たんだよ。
噂を聞きつけた俺とHは、急いで職員室に様子を見に行ったんだ。
そしたら、クロベーの母ちゃんは嗚咽して、生活指導の教師にすがりつき、泣きながら叫んでるんだ。
「あの子じゃありません!あの子は人の物を盗むような子じゃないんですっ!!」てな。
噂はあっと言う間に全校を駆け抜け、野次馬達が集まって来たんだ。
汚い格好で嗚咽するクロベーの母ちゃんを見て
「あいつら共犯に違いない」
などと心ない噂が学校中を駆け抜け、クロベーに対するイジメや中傷は更に激化したわけ。
この事態にさすがのクロベーもシュンとした様子だった。
俺とHは、クロベーを励まし勇気づけ、更に冤罪を晴らすべく真犯人を探し聞き込みを開始したんだよ。
519 :癒されたい名無しさん:2008/01/11(金) 21:50:17 ID:qTwoZygY
しかし、なんの手がかりも掴めず、クロベーに容疑が掛かったまま一週間を過ぎたある日、担任の先生から思わぬ報告があったんだ。
紛失した現金入り封筒が見つかったと・・・・
なんと紛失したと思われていた封筒。
実は、その女子生徒の勘違いで鞄の奥にあったんだよ。
でもあまりに騒ぎが大きくなったんで今まで言い出せなかったが良心の呵責に苛まれ、その子は、泣きながら担任に事の顛末を告白したんだ。
「黒田くん、疑いを掛けてごめんね」と担任から報告を聞き終えた瞬間、
Hのヤツが突然立ち上がり「うおっー!!」叫びながら走り出し、クロベーが犯人と最初に疑いを掛けたヤツにいきなりドロップキックをブチかましたんだ。
続いて俺も立ち上がり、助走をつけて、そいつにラリアットをブチかましたんだよ。
まるで、ゴディ・ウイリアムズ組みてーな見事なコンビネーションでな。
続いて、その取り巻きのヤツら含め3人をボコボコにしてやったんだよ。
すると心の優しいクロベーは俺達を止めるべく「やめて!!」と割って入ってきて、
俺達は「おまえは悔しくないんか!!」とクロベーを払いのけ、更に連中をどつきまくったんだ。
そんで、俺達は駆けつけた生活指導の教師に取り押さえられたわけ。
当然、死ぬほど怒られたよ。
俺達は何度も生活指導の教師にぶん殴られたんだ。
そんで親も呼び出されこっぴどく怒られた挙句、俺達がどついたヤツらの家を一軒一軒、親と一緒に頭下げて回らさせられたんだ。
行く先々の家で俺たちは罵倒され、それでも親に無理やり頭を抑えつけられ俺たちは頭を下げた。
正義のヒーローのつもりが、自分の親にまで迷惑を掛けてしまい、俺はその理不尽さに
一人悔し泣きしたんだ。
520 :癒されたい名無しさん:2008/01/11(金) 21:50:44 ID:qTwoZygY
ようやく、ほとぼりも冷めたある日、クロベーが俺とHの所にやって来て、こう言った。
「今日うちの母ちゃんが二人にご馳走したいって、だから遊びにおいで」と言うんだ。
別に用事もなかった俺達は即座に了承したわけ。
そんで放課後、俺達はクロベーの家に行ったんだ。だが、まだお母さんは仕事から帰ってなくて、家にはクロベーと弟しか居なかったんだ。
俺達は仕方なく、ファミコンはおろか、テレビすらないクロベーの家で母親の帰りを待ったんだよ。
いい加減に待ちくたびれた18:00を過ぎた頃、クロベーの母ちゃんが帰ってきた。
「みんな遅くなってごめんね、いまご馳走するからね」と手に下げた買い物袋をテーブルに置くとエプロンを付け何やら料理を始めたわけ。