『その人はな、僕の奥さんやねん。でもな、別居とかしてるとかじゃないねん。10年前くらいかな?癌で死んでしまってん。ほんで奥さんが生きてるときに1度も花をおくったことがなくて、奥さんが死んでから毎日奥さんのお墓にあの花束を届けにいっててん。』
おじいちゃんは亡くなった奥さんのために毎日、朝早く、電車にのり奥さんのお墓まで届けにいっていたのです。
わたしはまた涙が溢れました。
こんなにも優しい人がいてるのかと思うと涙がなぜかとまりませんでした。
わたしが泣いてるあいだ、おじいちゃんはあの優しい笑顔でわたしの頭をずっとなでてくれました。
『今日はありがとうございました。久しぶりに父が嬉しそうに笑っていたので僕も嬉しかったです。』
『こちらこそ急におしかけてしまってすいませんでした。』
息子さんはわたしにずっとお礼を言ってくれました。
しかし、その後にわたしをどん底にたたき落とす真実を聞くことになりました。
『もう長くないんです。余命宣告もされていて、いつそんなふうになってもおかしくないんです。』
わたしは信じたくなくて、必死にその言葉から逃げようとしました。
『なんでおじいちゃんが?なんでなん?なんで?なんで?』
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家に帰ってもずっと部屋にこもりきりになりました。そして、わたしはおじいちゃんになにかしてあげることはないのか考えました。
考えた結果、あることを思いつきました。
わたしはまた病院にいき、おじいちゃんに会いにいきました。
そしておじいちゃんにその日あった楽しいことを話すことにしました。
少しでもおじいちゃんに笑って欲しくて、少しでも元気になってほしくて、わたしは時間がある日は病院にいきおじいちゃんにたくさんの話をしました。
しかし、そんな日々に終わりがきました。
息子さんから連絡があり、おじいちゃんがもう危ない状態のことを聞き、わたしはすぐに病院にいきました。
わたしが病院について、病室に入ったとき、おじいちゃんはもう逝ってしまったあとでした。
わたしは泣き崩れました。
おじいちゃんとの思い出があふれ、今まで話してきた話もあふれてきました。
わたしにとっておじいちゃんは大切な人でした。
本当にかけがえのない存在でした。
わたしは今でも7時16分の電車に乗って、通学しています。
時々、はやめに家をでて電車をくるのをベンチ座りながら待ちます。
ふいに、おじいちゃんがあの照れた笑顔をしながらわたしの隣に座って、いろんな話をしてくれてるのではないかと思います。