名前:あいぽん 投稿日:2016-06-20
7時16分。
わたしは毎日その電車に乗って通学する。
今から話すのはわたしが高校生のときに出会ったあるおじいちゃんとのお話です。
7時16分の電車に乗るまでまだすこし時間があったので、ホームに設置されてあるベンチに座りました。
座りながら電車をまっていると、おじいちゃんが隣に座りました。
手にはちいさな花束が握られてました。
わたしがその花束を見つめていると、おじいちゃんと目が合いました。
『綺麗なお花やろ。』
『めちゃくちゃ綺麗ですね!オレンジ色のお花にすごい目がいきます!』
おじいちゃんが嬉しそうに花束を見せてくれました。
そこからおじいちゃんと仲良くなり、いろんな話をしました。
『おじいちゃんは今からどこ行くんですか?』
『いまからこの花束を渡しにいくんやで。いい歳してこんなん言うの恥ずかしいけど、大好きな人に会いに行くねん。』
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おじいちゃんはちょっと照れながら教えてくれました。わたしはそんなおじいちゃんが可愛くて可愛くて仕方がなかったです。
そして、誰にわたしにいくのか聞こうと思ったのですが、それを聞くのはちょっとダメかなと思い聞くことができませんでした。
そして、おじいちゃんと一緒に電車にのり、わたしが降りる駅についたのでおじいちゃんとはお別れになりました。
『明日もまた駅で会えたらいいなぁ。』
『もし、また会えたら喋りましょね。』
そう約束して、わたしは電車をおりました。
つぎの日。
7時16分の電車に乗るためにわたしは最寄り駅にむかおうと歩いていました。
この日もすこし余裕をもってはやめに最寄り駅にむかいました。
おじいちゃんにまた会えるのか気になったからです。
ホームにつくとベンチには誰も座っていませんでした。
『今日は会えないのかな…。』
そう思ったとき、
『おはよう。今日も会えたなぁ。』
おじいちゃんが声をかけてきてくれました。
そして、その手には昨日とおなじ花束が握られていました。
『今日も渡しにいくんですか?』
『そうやで。毎日、渡しにいくって決めてるねん。』
おじいちゃんはまた昨日とおなじ嬉しそうな顔で答えてくれました。
『どうしてオレンジ色の花束なんですか?』
『相手がねぇ、昔からオレンジ色が好きな人やねん。可愛らしい人でなぁ、仲がいいんやで。』
と、おじいちゃんが惚気けてくれました。
『おじいちゃんにとってその人はほんまに大切な人なんですね。わたしもそんな人にはやく出会いたいです!』
『そやで!その人はほんまに大切な人やねん。大丈夫やで。あんたはまだまだ若いから大切な人をみつける時間はいっぱいあるんやから。』
おじいちゃんの話を聞いて、わたしは羨ましく思い、またおじいちゃんの大切な人はどんな人なんだろと思いました。
そして、わたしたちは7時16分の電車がくるまでおしゃべりをするのが日課になりました。
いろんな話をしました。
おじいちゃんの過去、わたしの悩み、おじいちゃんの腰痛、お互いの話、ここには書ききれないほどの話をしてきました。
しかし、そんな楽しい時間が突然、おわってしまいました。
おじいちゃんが最寄り駅に来なくなったのです。
わたしは待ち続けました。
毎日、はやめに家をでて最寄り駅まで走っていきホームのベンチにはおじいちゃんはいませんでした。
ある日、わたしは最寄り駅のホームで待たずに最寄り駅の階段でまっていました。
すると知らない男性に話しかけられました。
『。。。ちゃんですか?』
わたしはドキッとしました。
どうしてわたしの名前を知っているんだろ…。
わたしは怖くなりその人を避けようとしたとき、
『わたしは、。。。の息子です!』
そう言われてわたしは驚きました。
その名前はあのおじいちゃんの名前だったからです。
『実は数ヶ月前から父は病気になりました。体調もあまりよくなくて、正直、長生きできるかわからない状態です。』
そう言われてわたしは頭が真っ白になりました。
おじいちゃんからはそんな話は一切きかされていなかったからです。
おじいちゃんは病院に入院していると言われました。
『父はずっと、。。。ちゃんがあの駅で待ってくれてるんや。やから、お前が行ってあね駅まで行って、もう待たなくていいことを伝えてあげてくれ。そう頼まれてずっと探してました。』
わたしは泣いていました。
悲しい気持ちのせいもありますが、なによりおじいちゃんがそんな大変なことになってるのを気付いてあげれなかった悔しさと不甲斐なさで涙がとまりませんでした。
『よかったら父に会ってあげてくれませんか?ずっと会いたい会いたいと言ってるので。』
『会わしてください。わたしもおじいちゃんに会いたいです。』
わたしは病院に行くことを決意しました。
『ここが父の病室です。さっき検査があって疲れてお昼寝してるかもしれないですけど…。』
『大丈夫です。』
わたしは病室に入り、足が止まりました。
おじいちゃんがとても弱々しく見えたからです。
すこし痩せたようにも見え、見るのが辛かったです。
おじいちゃんのベッドの隣にある椅子に座り、おじいちゃんが起きるのを待ちました。
しばらくして、
『。。。ちゃん?』
おじいちゃんがびっくりした顔でわたしを見ていました。
『会いたくて病院まで来ちゃいました。』
『僕も会いたかったで。』
わたしとおじいちゃんは手をとりあって2人で泣きました。
泣き続けました。
おじいちゃんも泣いていました。
言葉にできない思いを涙に変えて、泣き続けました。
『ありがとう。わざわざ会いにきてくれて。あと、会われへんくなってしまってごめんな。』
『謝らないでください。おじいちゃんにこうやってまた会えたんでわたしはそれだけで幸せです!』
わたしたちは積もり積もった話をしました。
久しぶりに感じる楽しい時間でした。
おじいちゃんも笑っていて、わたしもいっぱい笑っていて、本当に幸せでした。
そして、おじいちゃんからある話をされました。
『。。。ちゃんが気になってる話をしてあげよか?あの花束を渡しにいってる人の話。』
おじいちゃんは気付いていました。