「大丈夫 おまえは素晴らしいんだから」
僕は心に誓った
「これから僕が頑張って お母さんに楽してもらうぞ」
だけどなかなか仕事を 覚えられなくて よく怒鳴られた
「何度同じことを言わせるんだ!」
「すこしは頭を働かせろ!」
「おまえはほんとにダメなやつだな!」
怒鳴られるたびに 落ち込んだけど
そんなとき 僕の心には 母の声が聞こえてきた
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「大丈夫 おまえは素晴らしいんだから」この言葉を何度もかみしめた
そうすると 元気がわいてきた
勇気もわいてきた
「いつかきっと 僕自身の素晴らしさを証明して お母さんに見せたい」
そう考えると 僕はどこまでも頑張れた
仕事を始めて 半年くらい経ったときのことだ
仕事を終えて帰ろうとしていたら 社長がとんできて言った
「お母さんの事故にあわれたそうだ すぐ病院に行きなさい」
病院に着いたとき 母の顔には白い布がかかっていた
僕はわけがわからなくて 何度も「おかあさん!」と叫びながら ただただ泣き続けた
僕のために 身を粉にして働いてくれた母
縫いものの内職をしているときの 母の丸くなった背中を思い出した
母は何を楽しみにして 頑張ってくれてたんだろう?
これから親孝行できると 思っていたのに
これから楽させてあげられると 思っていたのに
葬式のあとで 親戚から聞いた
母が実の母ではなかったことを
実母は僕を産んだときに 亡くなったらしい
母はそのことをいつか僕に 言うつもりだったんだろう
もしそうなったら 僕はこう伝えたかった
「血はつながっていなくても お母さんは僕のお母さんだよ」
あれから月日が流れ僕は35歳になった
今あらためて 母にメッセージを送りたい
お母さん
僕とは 血がつながっていなかったんだね
そんな僕のために お母さんは 昼も夜も働いてくれたね
そして お母さんはいつも 言ってくれた
「おまえは素晴らしいんだから」って
その言葉が どんなに僕を救ってくれたか
どんなに僕を支えてくれたか
あれから僕なりに成長し 今は結婚して子どももいるよ
規模は小さいけど 会社の社長になって
社員たちと楽しくやっているよ
まだまだ未熟な僕だけど 僕なりに成長してきたと思う
その成長した姿を お母さんに見せたかったよ
「おまえは素晴らしい」 って言ってくれたお母さん
その言葉は間違っていなかった っていう証拠を見せたかった
そしてそれを見せられないことが 残念でならなかった
だけど最近きづいたんだ
お母さんは最初から 僕の素晴らしさを 見てくれてたんだよね
証拠なんてなくても 心の目でちゃんと 見てくれてたんだよね
だってお母さんが 「おまえは素晴らしいんだから」 って言うときは
まったく迷いがなかったから
お母さんの顔は確信に満ちていたから
僕も今 社員たちと接していて
ついつい その社員の悪いところばかりに 目が行ってしまうことがある
ついつい怒鳴ってしまうこともある
だけどお母さんの言葉を思い出して
心の目でその社員の素晴らしさを 見直すようにしてるんだ
そして心を込めて言うようにしている
「きみは素晴らしい」って