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親父のワイン

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名前:たっちゃま 投稿日:2014-03-17

俺は親父とあまり仲がよくなかった。
喧嘩したとか、お互いの性格が合わない、とかではなくてただ親父は無口な人でいつも怒ってるような表情をしていてたので、少し恐くて俺はあまり親父と会話をしなかった。

俺たちはそんな仲だったが、たまに親父と一緒に居酒屋に行っていた。
ちゃんと言うと「連れていかれていた」と言うほうが正しいのかもしれない。
その時俺は高校生だったが、よく友達の家で酒を飲んでいたこともあって酒の強さには少し自信があった。
だけど親父は「お前が外で酒を飲んでいいのは二十歳からや」と言って居酒屋では一切飲ましてくれなかった。
そんなこともあって、俺は居酒屋に行くのが嫌だったが親父に嫌々連れていかれていた。

居酒屋ではなぜか自然と親父と会話が出来る。
親父は酒を飲みながら会話をするのが好きな人だったから親父のほうからよく会話を持ち出してきた。
「学校は楽しいか?」とか「進路はどうするんだ?」とか普通の話しなんだけどあまり家で親父と話さない俺にとっては何となく楽しかった。
親父も家とは違うニコニコとした表情で俺と接してくれる。
それが嬉しかった。

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親父は居酒屋に行くたび「俺はお前の妻となる人と2人で酒を飲みたいんや」と言っていた。
俺のお袋は酒が一切飲めない人だったから親父はいつも家では1人で飲んでいた。
「俺より女かよwww」と言うと「男同士で飲んでも楽しいねぇわ」と言ってガハハ~と笑う。

「お前の顔は俺と一緒で顔が残念やから、結婚できるかどうか心配やわ」と言われると俺はいつもムカっとしていた。
事実なだけあって・・・。
だけどその台詞の最後に言う、「俺が生きているうちに頼むで」と言う時の親父の表情がとても寂しそうで、俺のムカっとした気持ちをスーっと冷まさせる。

そんな親父が俺が21歳の時に死んだ。
心筋梗塞での突然死だった。
俺はその時大学生で19歳のころから家を離れて1人暮らしをしていた。
親父の連絡が入ってきたのはちょうど就活をしている時だった。
俺は1人暮らしをするようになってからは1度も両親に会っていなかった。
病院に駆けつけたとき、親父とお袋の姿を見て凄く驚いたことを覚えてる。

2人とも白髪が増え、お袋は腰が曲がってるし、親父は顔の皺が増えていた。
親父の死が突然過ぎてその時は悲しくもなかったし涙も出なかった。
親父のベットの横でただ呆然としていた。

親父の葬式が淡々と済まされていった。
親父の棺おけに花を添える時に親父の顔を見ても実感が沸かなかったし、涙も出なかった。
そして葬式が終わり、俺はお袋と一緒に家で親父の遺品を整理していた。

俺は親父の部屋の押入れからワインを見つけた。

するとお袋が

「覚えてるかい?そのワインはあんたが修学旅行で買ったやつやで。
お父さんな、それをあんたと一緒に飲むのをずっと楽しみにしてたんやで」

思い出した。

これは中学生の沖縄の修学旅行で親父のために買ったものだった。
俺はてっきりもう飲んだものだと思っていた。
親父も「不味かったけど仕方なく飲んでやったぞ」とか言ってたし。
けど本当は俺と飲むために残して置いてくれていたんだ。

親父が死んでから初めて涙が出た。
涙が止まらなかった。
もういい大人だったけどお袋の膝で泣きまくった。

俺は結局、1度も親父と飲むことが出来なかった。
俺が二十歳の誕生日の日、親父から初めて俺に電話をくれた。

「今日は家に帰ってこないか?」

って。
だけど俺はただめんどくさいと理由だけでその誘いを断った。
たぶんその時にあのワインを飲もうとしていたんだろうなぁ。

親父、楽しみにしていただろうに。

俺は翌年の親父の命日の日に、親父の墓に行った。

親父が取っておいてくれたワインを持って。

俺は親父の墓の前でそのワインを開け、それを飲んだ。
親父と初めて交わした酒。
俺はゆっくりとそのワインを1人で飲んだ。

今までの出来事、お袋のことを墓に向かって話しながらゆっくりとワインを飲んだ。
何故か俺は親父と2人で居酒屋に来てる時のような感覚に陥った。
目の前に親父が本当にいるような気がした。
親父が「そうか、そうか」とニコニコとしながら聞いていてくれてるような気がした。
あの時に戻れたような気がした。

ワインを飲み切ると現実に引き戻された感じがした。

目の前には親父の墓がポツンとあった。

親父は満足してくれたかな・・・。
俺と一緒に飲めて。

次は同じ大学で出来た彼女を連れて親父の墓に行ってきます。
今度結婚する報告を持って。
ちゃんと親父の好きな酒も持っていくよ。

3人で一緒に飲もうな?

親父は喜んでくれるだろうか・・・

親父のワイン 現在 52pt 泣けた

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